裁判官の給料は安い?等級別の年収や手当・弁護士や検察官との比較も解説

裁判官の仕事は、人の人生を大きく左右する責任の重い仕事で拘束時間も長く、その仕事内容からすると、「裁判官は高い給料を貰っている」と想像している方も多くいらっしゃるでしょう。一方、裁判官の給料は、「仕事内容を考えると安い」と言われることもあります。
これから裁判官を目指す方は、実際に裁判官の給料はどのようなものなのか気になることでしょう。
そこで、今回の記事では、裁判官の給料が気になる方に向けて、裁判官の給与の内訳、裁判官の種類と年収、弁護士や検察官の年収との比較などを解説します。裁判官の給料について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1.裁判官の給与の内訳
1-1.裁判官の月額報酬
1-2.裁判官の賞与
1-3.裁判官の各種手当
1-4.裁判官には残業代や休日手当はない
2.裁判官の種類と年収
2-1.判事補
2-2.判事
2-3.高等裁判所長官
2-4.最高裁判所判事
2-5.最高裁判所長官
3.弁護士・検察官の年収
3-1.弁護士の年収
3-2.検察官の年収
3-3.最も年収が高くなる可能性があるのは弁護士
4.裁判官の給料は安い?年収を上げるには?
5.まとめ
1.裁判官の給与の内訳
裁判官の給与は、次の3つで構成されています。
◉月額報酬
◉賞与
◉各種手当
裁判官は、特別職の国家公務員であり、給与の内容は法律や規則で明確に定められています。以下では、裁判官の給与の内訳について具体的に解説します。
なお、裁判官の給与については、こちらの記事も併せてご覧ください。
→裁判官になるには?気になる年収や向いている人の特徴もご紹介
1-1.裁判官の月額報酬
裁判官の月額報酬は、裁判官の報酬等に関する法律で定められています。
区分 | 報酬月額 | |
最高裁判所長官 | 201万6,000円 | |
最高裁判所判事 | 147万円 | |
東京高等裁判所長官 | 141万円 | |
その他の高等裁判所長官 | 130万6,000円 | |
判事 | 一号 | 117万8,000円 |
二号 | 103万8,000円 | |
三号 | 96万8,000円 | |
四号 | 82万円 | |
五号 | 70万8,000円 | |
六号 | 63万6,000円 | |
七号 | 57万6,000円 | |
八号 | 51万8,000円 | |
判事補 | 一号 | 42万3,000円 |
二号 | 38万9,300円 | |
三号 | 36万7,100円 | |
四号 | 34万3,800円 | |
五号 | 32万2,400円 | |
六号 | 30万7,900円 | |
七号 | 29万1,400円 | |
八号 | 28万2,200円 | |
九号 | 26万3,500円 | |
十号 | 25万4,800円 | |
十一号 | 24万9,400円 | |
十二号 | 24万4,000円 |
裁判官の月額報酬は、階級によって細かく分けられており、最高裁判所長官と判事補12号とでは、月額報酬で約175万円もの開きがあります。
司法修習を終えて裁判官に任命されると、判事補12号からキャリアがスタートします。判事補12号の月額報酬は、24万4,000円です。ただし、判事補5号から12号までについては初任給調整手当があり、実際の月額報酬は約32万円となっています。
裁判官は、長期休暇や特別な事情がない限り、任官してから判事4号までは昇給ペースの差は設けられていません。判事補から判事になるのは任官から10年、判事4号になるのは任官から約20年です。つまり、任官してから約10年で月額報酬は約50万円となり、約20年で月額報酬は約100万円となります。
参考:裁判官の人事評価の現状と関連する裁判官人事の概況|裁判所
1-2.裁判官の賞与
裁判官の賞与は、毎年6月と12月に期末・勤勉手当として支給されます。賞与の額は、月額報酬に階級に応じた割合を上乗せした金額に支給月額をかけて算出された額です。
支給月額は、人事院が調査した民間企業のボーナスの支給状況を基礎として決定されます。令和5年の支給月額は、階級に応じて3.3か月分から4.4か月分でした。
参考:国家公務員の給与(令和5年版)|内閣官房内閣人事局
1-3.裁判官の各種手当
裁判官の給与には、国家公務員として手厚い各種手当があります。手当の具体例は、次のとおりです。
◉地域手当
◉広域異動手当
◉住宅手当
◉扶養手当 など
このうち、地域手当は、地域間の物価格差を調整するためのもので、地域ごとに月額報酬の3%〜20%が支給されます。
たとえば、支給割合の最も多い東京の場合、判事補12号でも月額4万8,800円の地域手当が支給されます(月額報酬24万4,000円×20%)。
1-4.裁判官には残業代や休日手当はない
裁判官の仕事は、判決の起案や令状発布など勤務時間に拘束されずに対応しなければならない場面も多いです。そして、裁判官の給料は、一般職の職員よりも高額に設定されており、これは時間外手当的な要素も考慮されていると言えます。そのため、裁判官の給与には残業代や休日手当はありません。
裁判官の報酬等に関する法律も、第9条第1項ただし書きで「ただし、報酬の特別調整額、超過勤務手当、休日給、夜勤手当及び宿日直手当は、これを支給しない。」と規定しています。
多くの裁判官は、夜間や休日も事件記録の読み込みや判決の起案をしていますが、残業や休日出勤で裁判官の給与が増えることはありません。
2.裁判官の種類と年収
ここでは、裁判官の階級・種類に応じた年収を紹介します。「裁判官の月額報酬」の項目で説明したとおり、裁判官の給与は勤務年数に応じて昇給する仕組みとなっており、中途退職をしない限りは判事4号の給与までは昇給できます。
2-1.判事補
任官後10年未満の裁判官を判事補といいます。判事補の月額報酬は、初任給調整手当を加えると約32万円から約42万円となっています。この月額報酬だけでも、年間で384万円から504万円ほどの金額です。
賞与は、4.4か月分で110万円から180万円ほどで、月額報酬と合わせた年収は、500万円から700万円ほどとなります。さらに、地域手当や住宅手当なども加算されるため、実質的な年収は、これよりも高くなるでしょう。
裁判官の年収は、判事補初年度でも500万円を超える金額で、民間企業の新卒者と比較するとかなりの好待遇と言えます。
2-2.判事
判事になると、月額報酬は50万円を超えます。これに賞与と手当を加えると、年収は800万円ほどとなるでしょう。
競争なく昇給できる判事4号の月額報酬は82万円で、賞与と手当を加えると年収は1200万円を超えます。任官から約20年、40代半ばから50代前半で安定して1200万円を超える年収を得ることは、民間企業ではそれほど多くはないでしょう。
裁判官は、特別の事情がない限り、任官から安定して昇給し続けることが保障されており、最終的に到達する年収を考慮すると、決して給料が安いとは言えません。
2-3.高等裁判所長官
高等裁判所長官は、裁判官の中でも出世した人だけがなれる役職です。高等裁判所長官の月額報酬は約130万円から140万円で、賞与や各種手当を加えた年収は、2,000万円を超えます。
2-4.最高裁判所判事
最高裁判所判事は14人で、内閣の任命と天皇の認証という特別の手続きによって任命されます。最高裁判所判事に任命されるのは、裁判官に限られず、検察官や弁護士、法律学の教授の中から選ばれるケースも多いです。
最高裁判所判事の月額報酬は146万円で、賞与や各種手当を加えた年収は、2,300万円ほどとなります。
2-5.最高裁判所長官
最高裁判所長官の月額報酬は200万円で、賞与や各種手当を加えた年収は、3,000万円ほどとなります。
裁判官が到達できる最高年収は約3,000万円です。高等裁判所長官以上を考慮しない現実的なラインでは、1,000万円台後半が裁判官の最高年収となっています。
3.弁護士・検察官の年収
ここでは、裁判官の年収と比較するため、裁判官と同じ法曹三者である弁護士と検察官の年収について解説します。
3-1.弁護士の年収
賃金構造基本統計調査によると、弁護士の平均年収は約950万円となっています。裁判官が判事になる10年目ころの平均所得は約1,500万円で、判事の年収と比べると倍の数値です。
開業した弁護士の年収は、数千万円から1億円を超えるのも珍しいことではありません。平均年収や最高年収においては、弁護士の方や裁判官よりも高収入と言えるでしょう。
しかし、弁護士には確実に昇給を続ける保障はなく、手厚い各種手当や退職金もありません。収入の安定を重視するのであれば、弁護士よりも裁判官の方が上です。
弁護士の年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→弁護士の年収はどのくらい?平均年収や中央値・仕事の魅力を検証しました
3-2.検察官の年収
検察官の年収は、一番下の検事20号で約600万円、トップの検事総長で約3,000万円となっており、裁判官と近い水準と言えます。
検察官も裁判官と同じく特別職の国家公務員であり、検察官と裁判官の年収に大きな差はないと言えるでしょう。
検察官の年収については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→検察官(検事)になるには?年収や仕事内容・警察との違いなど詳しく解説
3-3.最も年収が高くなる可能性があるのは弁護士
法曹三者のうち、最も年収が高くなる可能性があるのは弁護士です。独立開業している弁護士や大きな事務所のパートナー弁護士の中には、1億円を超える年収を稼いでいる人も少なくありません。
一方、裁判官や検察官の場合、最高裁判所長官や検事総長といったトップでも年収は約3,000万円です。
法曹三者を比較すると、最も年収が高くなる可能性があるのは弁護士で、安定した年収を得ることができるのが裁判官と検察官ということになります。
4.裁判官の給料は安い?年収を上げるには?
裁判官の給料は、初年度でも年収500万円以上で、10年目には800万円を超えます。勤務を継続すると安定して1,200万円を超える年収が保障されており、裁判官の給料は、決して安いとは言えません。
しかし、人の人生を左右するという裁判官の職責や、同じ法曹三者である弁護士と比較すると安いと感じてしまう方もいらっしゃるでしょう。
裁判官を続ける限り、現実的な年収の上限は1,000万円台後半です。裁判官のトップである最高裁判所長官でも年収は約3,000万円で、それを超える年収を目指すには、退官して弁護士になるなど他の道を目指すしかありません。
5.まとめ
裁判官の年収は、民間企業と比較すると決して安いものではありません。勤務開始から20年で安定して1,200万円を超える年収を得られる職業は、多くはないでしょう。
しかし、裁判官は安定した年収を得られるものの、金額には上限があります。裁判官の年収を安いと感じる方や年収を特に重視する方は、法曹三者の中では弁護士が有力な選択肢となります。
もっとも、職業選択の条件として年収のみを重視することは好ましいことではありません。裁判官は人の人生にも関わる問題を判断するという非常に重い責任を背負う職業です。仕事のやりがい、適性を基本軸として、年収の高さ、年収の安定性などさまざまな要素を十分に考慮し、自分にとってどの道を選ぶことが最適か検討することが望ましいでしょう。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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